「ビルドアップ走?徐々にペースを上げるだけでしょ?」── そう感じている方は多いと思います。実はビルドアップ走は区間の分け方やペースの上げ方にいくつかのパターンがあり、目的に応じて使い分けられる柔軟な練習です。「序盤を抑えて後半に上げる」体感を作る点では共通しており、フルマラソン本番で粘り強く走る土台になります。
この記事では、ビルドアップ走の効果・代表的なやり方のパターン・タイム目標別の目安・注意点を整理します。
ビルドアップ走とは?「徐々にペースを上げていく」練習の総称
ビルドアップ走は、同じ1回の練習の中でペースを段階的に上げていく練習の総称です。「3区間でペースを変える」が基本形ですが、4段階に分ける方法、1kmごとに少しずつ上げていく方法、時間で区切る方法など、複数のスタイルがあります。
狙いは「レース後半で粘る感覚」を体に覚えさせること。一定ペースのペース走では再現しにくい「疲労が溜まった状態でさらにペースを上げる感覚」を、1セッションで体感できます。
ビルドアップ走の代表的な4パターン
① 3区間タイプ(基本形)
合計距離を3区間にほぼ均等に分けて、各区間ごとにペースを上げる形。最もシンプルで、ビルドアップ走の入門編としてやりやすいパターンです。
例:10kmを「4km+3km+3km」に分けて、レースペース+15秒 → +0秒 → −15秒、と段階的に上げていく。
② 4段階タイプ
3区間より刻みを細かくした形で、レースペース基準で「+20秒 → +10秒 → ±0秒 → −10秒」のように4段階で上げていきます。最後の区間を「フィニッシュ」として短めに設定する方法も一般的です。
例:10kmを「2km+3km+4km+1km」のように分け、最後の1kmはレースペースより速く走り切る、という構成。
③ 1kmごと刻みタイプ
1kmごとに5〜10秒/km ずつペースを上げていく形。GPSウォッチで1kmラップを取りながら、毎km少しずつ上げていきます。区間の概念が無いので「気がつくと速くなっている」感覚が育ちやすいパターンです。
例:8kmで1km目を6’30″、2km目を6’25″…と5秒ずつ上げて、最後の8km目を5’55″で終える。区間の切り替えを意識せず、なめらかに上げる感覚が掴めます。
④ 時間ベース(初心者・距離が読めない時)
距離計測が難しい場合や初心者向けに、「最初の20分はゆっくり、次の20分はふつう、最後の20分は気持ち速く」のように時間で区切るパターン。GPSウォッチが無くても実施でき、コースを気にせず取り組めます。
なぜ効くの?ビルドアップ走の3つの効果
① ペース感覚が育ちやすい
同じ強度のペース走と違い、ビルドアップ走は異なるペースを1セッションで体感できます。続けていくと、本番で時計を見なくても「今、何分ペース」が体感でわかるようになっていきます。
② 後半に上げるメンタル耐性が育つ
疲労が溜まった状態でさらにペースを上げる経験を繰り返すことで、レース30km以降に「ここで上げる」という選択肢を取りやすくなります。一定ペースのペース走だけでは育ちにくい部分です。
③ ペース配分(イーブン or ネガティブスプリット)の習慣がつく
マラソンで多くのランナーが目指すのが「ネガティブスプリット」(後半の方が前半より速い)。ビルドアップ走を続けていると、「前半をあえて抑える」感覚が当たり前になっていき、本番でも序盤に突っ込みにくくなる傾向があります。
各走者向けの目安|タイム目標別のペース設定
下記は「4段階タイプ(レースペース基準で +20秒 → +10秒 → ±0秒 → −10秒」を採用した場合の目安です。3区間で実施する場合は、序盤と中盤の値をひとつにまとめてください。
- 初心者(完走目標):合計6km。距離例「2km+2km+1km+1km」、ペース 8分00秒 → 7分40秒 → 7分20秒 → 7分00秒。月2回
- サブ5:合計8km。距離例「2km+2km+2km+2km」、ペース 7分25秒 → 7分15秒 → 7分05秒 → 6分55秒。月2〜3回
- サブ4:合計10km。距離例「2km+3km+3km+2km」、ペース 6分00秒 → 5分50秒 → 5分40秒 → 5分30秒。月3回
- サブ3.5:合計12〜15km。ペース 5分20秒 → 5分10秒 → 5分00秒 → 4分50秒。月3回
- サブ3:合計15〜18km。ペース 4分35秒 → 4分25秒 → 4分15秒 → 4分05秒。月3回
※上記はあくまで目安。1kmごと刻みタイプを採用する場合は「8〜10kmで1kmあたり5〜10秒ずつ上げる」の形で組み立て直してください。
心拍数の目安
ビルドアップ走の心拍は序盤=Zone 2(70〜75%)→ 中盤=Zone 3(75〜82%)→ 終盤=Zone 4(82〜88%)と階段状に上昇していくイメージです。最後の区間がペース走と同等か、それより少し速い強度に達するのが目安。
ビルドアップ走をやる前の3つの注意点
① 序盤は抑えめに入る
よくある失敗は、序盤から速く入って、終盤で上げられなくなるパターン。「物足りない」と感じるくらい序盤を抑えておくのがコツです。GPSウォッチでラップを確認しながら、設定ペース ± 5秒くらいで守れると安定します。
② 区間切り替えで「ペース変化」を意識する
「あ、今ペースを上げた」と体に伝える意識が大切です。区間の切り替えタイミングで深呼吸して、腕振り・歩幅を1段階大きくするイメージで。これがレース中の「上げる動作」のリハーサルにもなります。
③ 平坦なコースを選ぶ
坂道があるコースだとペース管理が難しくなります。河川敷・大きな公園のループ・住宅街の平坦な道路がやりやすいでしょう。同じ場所を往復する形でも構いません。
よくある質問
Q1. 3区間と4段階、どちらを選べば良い?
初めての人は3区間から始めるのが分かりやすいです。慣れてきたら4段階や1kmごと刻みに進むと、ペースコントロールの幅が広がります。両方をローテーションしても良いと思います。
Q2. 1kmごとに上げるパターンと3区間、効果は違う?
得られる体感は少し違います。3区間は「明確なペース変化」を体に教えるのに向いていて、1kmごと刻みは「なめらかにペースを上げる感覚」を養うのに向いています。フルマラソンで「徐々に上げる」場面が多い人は1kmごと、「ある時点でギアを変える」場面が多い人は3区間/4段階が合います。
Q3. 距離が足りない時は?
合計距離は8〜15kmが取り組みやすいレンジです。それより短いと「徐々に上げる」体感が出にくくなります。時間が無い日は「時間ベース(30〜40分)」のパターンに切り替えるのも一つの手です。
Q4. ロング走と組み合わせていい?
「ロング走の後半でペースを上げる」というロングビルドアップ(25km走の最後の5kmを目標ペース付近)は強度が高い練習で、サブ3.5以上の経験者向けの印象です。初心者・サブ4の段階では、まず通常のビルドアップ走を優先するのが安全だと思います。
はっしーのコメント
ビルドアップ走は「フルマラソン本番で再現したいパターン」を作る練習だと感じています。「序盤抑えて、後半上げる」── このパターンが体に染みついていると、本番でも同じ走り方をしやすい。区間の分け方は3区間でも4段階でも1kmごとでも、自分に合うやり方で大丈夫です。
初フルマラソン完走目標なら「6km × 3区間 を月2回」から。サブ4以上であれば「10〜12km × 4段階 を月3回」。サブ3を狙う段階では「15〜18km × 4段階(最後にフルペース −10〜15秒)を月3回」あたりがひとつの目安だと思います。
今週末、いつものペース走を「3区間に分けてビルドアップに変えてみる」のはいかがでしょうか。それだけでも「上げる」感覚が体に残ります。



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